第63回気象予報士試験 専門知識 問4
- 人参 走る
- 5月24日
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更新日:5月31日
数値予報とその予測対象である⼤気現象について述べた次の⽂章の下線部(a)〜(c)の 正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。 ⼤気現象には様々な時間空間スケ−ルを持つものがあるが、⼀般に、 (a) 数値予報モデ ルで予測可能な現象の⽔平スケールの下限は、⽔平格⼦間隔が⼩さいほど⼩さくなる。 また、数値予報が予測できる⼤気現象は、数値予報モデルによっても異なる。数値予報 において組織化された積乱雲からもたらされる強い降⽔の予測精度を向上させるには、 (b) プリミティブ⽅程式系を基礎⽅程式とする数値予報モデルを⽤いる必要があり、 物理過程として最も重要な部分は、(c) 地⾯からの蒸発や⽇射による地⾯の加熱を考 慮した下部境界からの熱・⽔蒸気供給のパラメタリゼーションである。
(a) 数値予報モデ ルで予測可能な現象の⽔平スケールの下限は、⽔平格⼦間隔が⼩さいほど⼩さくなる。
解答:正
難易度:★☆☆☆☆
日本国内で計算するポイントが100か所の数値予報と、10000000か所の数値予報では、どちらがスケールの小さな積乱雲を再現できると思いますか?もちろん後者です。
問題文の通りとなります。
気象庁ではGSM、MSM、LFMのモデルをそれぞれ使用していますが、
MSMは格子点間隔5km、LFMは2kmで、LFMまでいくとようやく積乱雲が再現できたりできなかったりします。
なお、数値予報モデルで表現可能な現象は水平スケールが格子間隔の5~8倍以上必要になります。
GSMの格子間隔は13kmなので、GSMで再現できるのは約100km以上のスケールの現象となります。
数値予報 において組織化された積乱雲からもたらされる強い降⽔の予測精度を向上させるには、 (b) プリミティブ⽅程式系を基礎⽅程式とする数値予報モデルを⽤いる必要があり、
解答:誤
難易度:★★☆☆☆
プリミティブ方程式系は「静力学平衡を仮定」します。

『運動方程式は大気の流れ(風)を支配する方程式である。鉛直方向の運動方程式は 「静力学平衡」(もしくは「静水圧近似」)を仮定する場合(発達した積乱雲等でなければ 、かなりよい精度で成り立つ)、3つ目の式の静力学平衡の式が用いられる。この式は 大規模な運動で卓越するふたつの力が釣り合っている状態を示し、鉛直速度の時間変化率を予報する必要がないため、計算量が少なくなるというメリットがある。』(気象庁数値予報解説資料集)
要するにプリミティブ方程式系は鉛直方向の動きを簡単な式にしていて、計算量を減らしています。
その分、全球的に長い時間積分しているのがGSMというモデルです。
逆に、積乱雲のような、水平スケールが小さいけど鉛直流が大事な現象はプリミティブ方程式系では厳しいです。
数値予報 において組織化された積乱雲からもたらされる強い降⽔の予測精度を向上させるには、 (b) プリミティブ⽅程式系を基礎⽅程式とする数値予報モデルを⽤いる必要があり、 物理過程として最も重要な部分は、(c) 地⾯からの蒸発や⽇射による地⾯の加熱を考慮した下部境界からの熱・⽔蒸気供給のパラメタリゼーションである。
解答:誤
難易度:★★☆☆☆
『例えば、ひとつひとつの雲は、中には発達した積 乱雲や水平方向に広がった層雲が発生することも あるが、多くの場合は現在の数値予報モデルで設定 される格子間隔よりも小さい。したがって、格子平 均の物理量により直接雲の存在をすべて表すこと はできない。しかし雲は大気において放射量に影響 を及ぼす重要な要素であり、また雲はその中で降水 粒子が生成・落下することにより地上に降水をもた らすものであるため、天気予報の精度にとっては非 常に重要である。数値予報モデルで直接その存在を 表すことができないからといって、それによる効果 を無視することはできず、その存在やそれによる効 果を何らかの形で表現する必要がある。』
ということで積雲対流パラメタリゼーションとか結構大切です。
もちろん、放射や地表面等のパラメタリゼーションも行われています。
詳しくは 第4章 数値予報モデル(気象庁) を読んでもらった方がよさそう。
よって解答は正誤誤の③です。









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