第63回気象予報士試験 専門知識 問8
- 人参 走る
- 6月3日
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更新日:6月4日
図は、4月のある日の15時における気象衛星画像(赤外、可視)である。図にA~Dで示した各領域あるいは雲域について述べた次の文(a)~(d)の下線部の正誤について、下記の①~⑤の中から正しいものを1つ選べ。
(a) 赤外画像の領域Aに見られる細かい縞状の雲域は、トランスバースラインと呼ばれる上層雲で、強風軸に対応していると推定される。この付近では航空機に影響を及ぼす乱気流が発生することがある。
(b) 領域Bのにんじん状の雲域は、赤外画像、可視画像ともに白く輝いており、発達した積乱雲を含む対流雲が主体となっている雲域と判断できる。
(c) 領域Cには、赤外画像で暗灰色と黒色の境界が見られるが、可視画像では同様な境界が確認できないことから、この境界は海面水温の違いによって現れたと推定される。
(d) 赤外画像、可視画像いずれにおいても領域Dに縞状の雲域が存在している。このような雲が発生するときは、風は下層から上層まで山脈にほぼ直角方向に吹き、雲の高さ付近では不安定な成層状態となっていることが多い。

(a) 赤外画像の領域Aに見られる細かい縞状の雲域は、トランスバースラインと呼ばれる上層雲で、強風軸に対応していると推定される。この付近では航空機に影響を及ぼす乱気流が発生することがある。
解答:正
難易度:★★☆☆☆
Aのエリアについて…
赤外画像で明るい→上層に(も)雲がある
可視画像で暗い →薄い
→→→上層にある薄い雲であることがわかる。

上の図で赤い矢印で示されているところが「トランスバースライン」となります。
トランスバースラインは
・流れの方向にほぼ直角な走向
・巻雲などの上層雲で構成
・圏界面直下で励起されたケルビン・ヘルムホルツ波が可視化されたもの(覚えなくてよい)
という特徴を持ちます。
また、トランスバースライン付近では乱気流の発生頻度が高いことも知られています。

上の図は衛星画像(問題文ではない方)に対応する200hPa天気図です。
強風軸がおおよそトランスバースラインに対応していることが分かるかと思います。
また、台風の外側の雲でも同様の雲が見られることがあります。
トランスバースラインについては気象衛星センターHPがおすすめです。
(b) 領域Bのにんじん状の雲域は、赤外画像、可視画像ともに白く輝いており、発達した積乱雲を含む対流雲が主体となっている雲域と判断できる。
解答:正
難易度:★☆☆☆☆
Bのエリアについて…
赤外画像で明るい →上層に(も)雲がある
可視画像で明るく団塊状 →発達した積乱雲
テーパリングクラウドとも言われていたやつですが、テーパリングクラウドは「先細り」という意味となり、先が細いというよりは広がっていくイメージなので使用しない言葉になっています。
「人参状雲」とか言ったりします。
(c) 領域Cには、赤外画像で暗灰色と黒色の境界が見られるが、可視画像では同様な境界が確認できないことから、この境界は海面水温の違いによって現れたと推定される。
解答:正
難易度:★★☆☆☆
再掲↓

可視画像で何も見えない → 雲は無い
のに、赤外画像では差があります。
赤外画像で計測しているのは輝度温度、すなわち表面温度です。
雲が無いのであれば、Cの領域には海がありますので、海面水温の差によって現れた境界ということになります。
(d) 赤外画像、可視画像いずれにおいても領域Dに縞状の雲域が存在している。このような雲が発生するときは、風は下層から上層まで山脈にほぼ直角方向に吹き、雲の高さ付近では不安定な成層状態となっていることが多い。
解答:誤
難易度:★★★☆☆
見た瞬間分かる「山岳波」でございます。
不安定ならもっと別の雲が出てくるだろうし、山岳で上昇流が励起されたら上昇流が止まりませんので、安定な成層となります。(という感想)

これは強い西風が奥羽山脈を越えることで、山岳波が現れた例です。
なお、波上雲の発生条件として
・風向は上層まで厚い層にわたってほぼ一定であり、障害物の走向にほぼ直交している
・上層までのかなり厚い層にわたって絶対安定である
・雲を形成するのに十分な水蒸気が存在する
・山頂付近でおよそ10m/s以上の風速がある
・スコーラー数が減少する成層の中で発達する
が挙げられます(気象衛星センターHP)
ということでdのみ誤りです。









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